月次サマリー / 確定版
2026年9月
電力事業 月次サマリー
現物kWhの確保、補完オークション、エリア値差、託送料金の小売反映が同時に進んだ1カ月を、小売・発電・送配電の実務につなげて整理します。
01エグゼクティブサマリー
9月は、供給力の「量」、短期需給の「価格信号」、系統原価の「小売転嫁」が同時に具体化しました。
- 小売の供給力確保は、現物kWhを中心に管理する方向が鮮明です。3年度前50%・1年度前70%の基本方向を前提に、契約の確実性・検証可能性を見て、電力先物は当面算入しない案が示されました。最終決定ではありません。
- 市場平均は前月並みでも、エリア差が拡大しました。JEPXスポットのシステム平均は19.12円/kWhで8月比ほぼ横ばい。一方、9エリア間の30分値差は平均14.56円/kWhとなり、前月の9.63円/kWhから約51%拡大しました。
- 11月の託送料金改定は、料金・請求・顧客説明の実装課題へ移りました。8エリアで低圧平均収入単価が税抜1.07~1.99円/kWh上昇し、東京・四国・九州などが小売料金への反映額を公表しました。
本レポートでは、公表済みの事実、審議会等の提案、審査・検討中、未公表を分けています。「案」は決定事項として扱いません。
029月の重要数値
ニュース量よりも、実装に直結する四つの数値を先に押さえるべきです。
出所:電力事業ナビ掲載トピック、JEPXスポット市場CSV、一般送配電事業者8社の公表資料。市場値は2026年9月1~30日の1,440コマ。
03月内の意思決定タイムライン
月前半に系統原価、後半に供給力・短期需給・小売料金の論点が集中しました。
- 8社の収入上限変更を承認物価・労務費・金利上昇を反映。託送料金単価の改定手続きへ。
- 8エリアが託送供給等約款を変更届出低圧平均は税抜1.07~1.99円/kWh上昇。個別単価・小売料金とは区別が必要。
- 予備電源第3回は応札なし/島根2号機が営業運転再開供給力の退出抑止と既設電源の復帰が同日に表面化。
- 小売の現物kWh評価案確実性・確認可能性を重視し、先物は当面除外する案。
- 補完オークション・広域過不足率の案2~3年前の退出リスクと、短期の不足行動を別制度で扱う方向。
- 東京・四国・九州などが小売料金への反映を公表11月の適用境界、日割り、通知、約款・マスター改定が実装課題に。
0482件のトピックを五つの変化へ集約
設備案件が39%を占めましたが、経営上の焦点は制度・市場・料金の連鎖です。
五つの構造変化
- 供給力確保を、契約名ではなく対象年度の現物kWhと証憑で評価する方向
- 高経年火力の退出リスクを、実需給2~3年前の補完オークションで扱う案
- 広域の需給不足を、小売・BGの調達行動へ伝える新しい公表指標案
- レベニューキャップの原価上昇が、11月から小売料金へ顕在化
- 料金原価・工事検収・設備保全で、データ定義と独立照合の重要性が上昇
出所:電力事業ナビ「新着トピック」。対象は2026年9月1~30日の22日分、計82件。優先度「高」は40件。
05小売の供給力確保:現物と価格ヘッジを分離
先物を足して確保率を満たす管理ではなく、受渡年度別の現物kWhと価格ヘッジ量を別台帳で持つ準備が必要です。
| 区分 | 3年度前 | 1年度前 | 現在地 |
|---|---|---|---|
| 通常水準 | 50% | 70% | 基本方向。詳細設計中 |
| 販売電力量5億kWh未満 | 25% | 50% | 当初の軽減案。期間等は未確定 |
| 相対・FIT/FIP | 現物の確実性・確認可能性を評価 | 契約認定方法を検討 | |
| 電力先物 | 当面、確保手段に算入しない案 | 提案・未決定 | |
契約台帳には、対象年度、受渡量、数量変更・解約条件、電源廃止・転売、BG内の割当、証憑の所在を持たせる必要があります。価格固定か市場連動かは、現物の引渡しと価格変動リスクを分けて記録します。
出所:資源エネルギー庁「小売電気事業者による中長期的な供給力確保に係る詳細設計」(2026年9月18日)。一次資料
06補完オークション:退出リスクを2~3年前に捕捉
容量市場と予備電源の間に、未計上の大規模火力を対象とする新しい確保手段を置く案です。
- 原則として供給計画に未計上の火力を対象とする案
- コストベースの入札、追加オークション・予備電源との重複整理が論点
- 小売側では、容量拠出金等の費用影響を制度確定前からレンジで持つ必要
提案段階 9月29日の委員会資料に示された案であり、募集要綱・約定ルールとして確定したものではありません。
出所:電力広域的運営推進機関 第122回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料1。一次資料
07広域過不足率:調達不足を見せる新シグナル案
広域予備率だけでなく、小売・BGの調達不足を表す指標を公表し、需給行動へつなげる案が示されました。
| 指標 | 現状整理 | 広域過不足率を用いた試算 |
|---|---|---|
| 広域予備率8%未満時の平均インバランス料金 | 74円/kWh | 86円/kWh |
| 200円/kWhに達するコマ | — | 6コマ |
この数値は制度導入後の実績ではなく、資料上の試算です。料金算定への反映は未決定であり、まず2026年10月1日以降の新算定式の状況を見ながら検討する段階です。
出所:電力広域的運営推進機関 第122回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料2。一次資料
08JEPX:平均は横ばい、出来高は季節減
システム平均は8月比ほぼ横ばいですが、月内最低0.10円と高低差の大きい市場でした。
| 指標 | 7月 | 8月 | 9月 | 8月比 |
|---|---|---|---|---|
| システム平均(円/kWh) | 17.91 | 19.14 | 19.12 | ▲0.02 |
| P95(円/kWh) | 31.49 | 31.48 | 31.16 | ▲0.32 |
| 月内最小(円/kWh) | 7.82 | 8.00 | 0.10 | ▲7.90 |
| 月内最大(円/kWh) | 46.88 | 50.01 | 49.00 | ▲1.01 |
| 約定総量(GWh) | 37,697.2 | 38,580.4 | 32,412.5 | ▲16.0% |
9月2日はシステムプライスの日内値幅が33.50円/kWh、9月30日は32.50円/kWhでした。月平均だけでは、需要形状・再エネ出力・連系線制約によるコマ別リスクを捉えられません。
09エリア値差:東京・中部が上振れ
システム平均が横ばいでも、調達原価はエリアによって6円超の差が生じました。
9エリア間の30分値差は平均14.56円/kWh、最大42.10円/kWh。平均値差は8月の9.63円/kWhから約51%拡大しました。東京・中部の市場連動メニュー、エリア間ポートフォリオ、蓄電池の価値評価では、全国平均だけの予算管理を避ける必要があります。
単位:円/kWh。出所・集計方法は前節と同じ。蓄電池収益を示す数値ではなく、時間順序・効率・SOC・劣化・手数料を考慮していません。
10託送料金:制度論から請求実装へ
11月1日の改定は、料金単価だけでなく、適用日・検針日・日割り・顧客通知を一体で実装する案件です。
| 事業者 | モデル | 現行 | 見直し後 | 影響額 |
|---|---|---|---|---|
| 東京電力EP | 従量電灯B・30A・260kWh | 9,307円 | 9,561円 | +254円 |
| 四国電力 | 従量電灯A・260kWh | 8,894円 | 9,372円 | +478円 |
| 九州電力 | 従量電灯B・30A・250kWh | 6,876円 | 7,243円 | +367円 |
モデル額には、各社が置いた燃料費調整額、再エネ賦課金、契約条件が含まれるため、単純なエリア比較には使えません。自社への反映では、託送の増分と燃料費調整・政府支援・自社マージンを分けて説明する必要があります。
出所:東京電力EP(9月29日)、四国電力(9月29日)、九州電力(9月28日)。適用条件は各資料を参照。
11料金統制:少額単価でも母数が大きい
規制料金の誤りは、影響単価の大小よりも、定義・証憑・対象契約・返還処理を再現できる統制が問われます。
| 事業者 | 確認された内容 | 顧客影響 | 未確定 |
|---|---|---|---|
| 中部電力系 | 3年間の原価を27億円過大算定 | 現契約500.9万件、返還規模約12億円、家庭モデル月10円の試算 | 正しい単価、返還方法 |
| 関西電力 | 発電側課金の割引区分を誤り、3年間で約1,400万円過大算定 | 影響が生じ得る対象約492万件、最大32カ月、主に月最大1円 | 返還額、方法、時期 |
- 標準電圧と公称電圧、割引区分、対象期間の定義をマスター化する
- 認可・届出原価と請求単価を別担当が再計算し、版・根拠を固定する
- 解約済み顧客を含む返還対象、端数、税、日割り、通知を一つの照合表で管理する
出所:中部電力・中部電力ミライズ(9月10日)、関西電力(9月29日)。返還に関する未公表事項は推定していません。
12料金・競争:シェアは伸長、比較は条件差へ
新電力シェアは前年を上回る一方、託送・燃調・容量・市場連動の条件差が顧客価値と粗利を左右します。
いずれも2026年4月実績で、販売電力量は前年同月比+1.9ポイント、販売額は+2.8ポイント、低圧契約口数は+1.7ポイントです。9月末時点の料金データベースは東京エリア42社・169メニューを収録し、146メニューを比較対象、料金非公表・適用未確定等の23メニューを参考掲載としています。
競争統計は9月実績ではありません。電力取引報の最新取込済み対象月が2026年4月であることを明示して利用します。料金メニュー数は各社公表資料を編集したサイトデータで、行政統計ではありません。
出所:電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報」2026年4月分(2026年7月17日公表)。一次資料
13電源・レジリエンス:供給力は工程と状態で管理
定格出力の合計ではなく、運転・停止・点検・復旧の状態を30分需給と中期調達へつなぐ必要があります。
| 日付 | 事象 | 事実 | 実務上の扱い |
|---|---|---|---|
| 9月16日 | 島根2号機 | 220日間の定期検査を終え、82万kWで営業運転再開 | 復帰を反映し、安定運転と次回停止を継続確認 |
| 9月17日 | 美浜3号機 | 漏水を確認し原子炉停止。25日に配管の貫通穴等を公表 | 再起動時期は未確定としてシナリオ管理 |
| 9月22日 | 台風25号後の千葉 | 17時30分時点で約45,230軒が停電 | 速報値。最終被害・復旧実績と区別 |
14確定度:実装・シナリオ・監視を分ける
同じ会議資料でも、既に効力がある事実と、制度案・試算を同じ確率で予算へ入れてはいけません。
| 区分 | 対象 | 管理方法 |
|---|---|---|
| 公表・実施済み | 9月JEPX実績、島根2号機再開、8エリア託送改定、各社の料金公表 | マスター・予算・契約・需給へ反映 |
| 提案・詳細設計中 | 先物の当面除外、補完オークション6%案、広域過不足率 | 複数シナリオとトリガーで管理 |
| 審査・原因調査中 | 美浜3号機の復帰、個別制度の最終要件 | 供給力へ確定計上せず監視 |
| 未公表 | 中部・関西の返還単価・方法・時期の一部 | 顧客案内とシステム改修を仮決めしない |
15関係者別のSo What
同じ変化でも、必要なデータ粒度と意思決定の期限は部門ごとに異なります。
1610月に先行するアクション
制度確定を待つ作業と、今すぐ整備できるデータ・統制を切り分けます。
| 期限目安 | オーナー | 実施内容 | 完了条件 |
|---|---|---|---|
| 10月9日 | 調達・需給 | 現物契約、FIT/FIP、BG配分、先物を受渡年度別に再分類 | 確保率試算と価格ヘッジ量が別集計できる |
| 10月15日 | 料金・CIS | 託送改定の料金マスター、適用日、検針・日割り、通知文を照合 | 代表契約と境界日で期待請求額が一致 |
| 10月15日 | リスク管理 | 東京・中部を中心にP95、エリア差、需給不足のストレスを更新 | 限度額・追加調達判断の閾値が決裁済み |
| 10月31日 | 経理・内部統制 | 原価算定から請求・返還までの独立再計算を点検 | 定義・証憑・版・承認者を追跡できる |
| 継続 | 経営企画 | 補完オークション、広域過不足率、返還方法を監視 | 決定時の予算・規程変更トリガーが明確 |
17データ時点・方法・主要参照資料
一次資料の公表日と対象期間を分け、未確定事項は未確定のまま記載しました。
- トピック
- 2026年9月1~30日の22日分、82件。2026年10月2日生成のサイト台帳を集計。
- 制度動向
- 2026年10月1日時点の27論点。9月中に公表された資料を中心に、10月2日までの編集確認を反映。
- 市場
- JEPX 2026年度CSVの9月1~30日・1,440コマ。2026年10月3日に取得・集計。
- 競争
- 電力取引報は2026年4月実績(7月17日公表)。9月実績ではない。
- 料金
- 各社公表資料およびサイト料金台帳(2026年9月30日時点)。会社別モデルの条件差に注意。
- 文書形式
- UTF-8、自己完結型HTML。外部Webフォント・外部スクリプト・配布PDFは使用していません。
主要参照資料
- 資源エネルギー庁:電力事業環境整備ワーキンググループ 第4回
- OCCTO:第122回調整力及び需給バランス評価等に関する委員会
- 経済産業省:一般送配電事業者8社の収入の見通し変更承認
- JEPX:スポット市場
- 電力・ガス取引監視等委員会:電力取引報公表結果
- 東京電力EP:託送料金見直しの料金反映
- 四国電力:低圧料金の見直し
- 九州電力:新たな電気料金単価
- 中部電力:特定小売供給約款の原価算定誤り
- 関西電力:規制料金の原価算定・単価設定誤りの調査結果
市場値は単純平均。推計値・先物・予測は含めていません。料金モデルは各社が置く契約・使用量・燃調・賦課金等が異なるため、横並びの安価判定には使用しません。